ストレートネックとは、本来はゆるやかなカーブを描いているはずの頸椎(首の骨)が、前傾姿勢によってに真っ直ぐになってしまっている状態です。
本来、S字カーブを描くことで、頭の重さをバネのように支えている頸椎が、真っ直ぐになってしまうと、頭を支える力が常に首にかかるため、首の痛みや肩こりをはじめ、様々な症状につながってしまいます。
これを解消するツボの1つとして、ツボロジーのツボ、後金門を紹介します。
後金門は、首後面の下の方(下部頸椎・C4〜C7の高さ)で起立筋から外方にかけて緊張が強いストレートネックに効果があります。
後金門の場所
まず金門というツボを探します。外踝の前縁を下に辿っていくと、踵骨と立方骨の間の凹んだところがあります。その中で最も凹んでいるところが金門です。金門を見つけたら、そこから後ろ(かかと方向)に5㎜程移動すると、踵骨の縁に小さな凹みが有り、指で押すとめちゃくちゃ痛いところがあります。そこが後金門です。
後金門はストレートネック由来の首の痛み、肩こりの他にも、腱鞘炎、腰痛、お腹の不調、沈みがちな気分にも効果を確認しています。
では、なぜ、この足のツボが、ストレートネックや全身の様々な症状に効果があるのでしょうか。
ここがわかると、より有効に活用できますし、体の仕組みの奥深さ、ツボロジーの面白さを感じていただけるんじゃないかと思います。少し専門的になりますが、ツボロジカルな解説におつきあいください。
前重心で内股だとストレートネックになる?
人体には「楽な姿勢」が存在します。余計な力を使ってない姿勢のことです。楽な姿勢が崩れると、体の様々な所で無意識の力みが出ます。すぐに楽な姿勢に戻れば良いのですが、歪んだ姿勢が続くと、脳が歪んだ姿勢を楽な姿勢と勘違いし、楽な姿勢をとることが出来なくなり、常に力んでいる部分ができてしまいます。その結果、コリや痛み、痺れなど体の不調に繋がります。
ストレートネックが起こる主な原因の1つとして、足首の外反があります。
体重は足の裏全体で均等に支えるのが体にとって楽です。何らかの原因で足首が外反すると、足の母指球に偏って体重がかかります。
母指球に体重が乗ると、腿の内側(内転筋)に力みが出ます。この状態だと、下半身が前に傾くので、骨盤が後傾します。このままでは倒れてしまうので、背中を猫背にしてバランスととります。このとき、お腹に力みが生まれます。
猫背なので、首が前に出てしまいストレートネック完成です。
このとき、前に突き出た頭を支えるため、首の後面(脊柱起立筋)や肩(僧帽筋)に力みが生まれています。
ツボ(後金門)の働き
後金門を押すと足首の外反が難しくなります。後金門は、足首の外反をする際に非常に重要な箇所と脳が認識しています。そこに強い刺激を感じると、「足首を外反したらヤバイ!」と脳が判断し、「足首の外反」のシステムのスイッチを切ります。
すると、「足首の外反」により生じていた、内転筋の力み、お腹の力み、首の後ろの力みが緩和されます。猫背を維持するための力みが消えるので、「猫背は楽な姿勢では無い」と脳が思い出し、自然と楽な姿勢に戻ります。
この現象を起こすには、強い刺激が必要ですが、強い痛みが生じてしまうと違う力みが生まれ、高い可能性で逆効果になってしまいます。
その点、鍼の刺激は最適です。
鍼のような鋭い物質が皮膚に触れるのは脳にとっては強い刺激です。しかし、鍼治療を受けたことがある人はご存じと思いますが、鍼治療に使われる細い鍼は痛みをそれほど感じません。さらに、後金門に関してはシール鍼の刺激で十分なのが検証でわかっています。シール鍼の鍼はほとんど痛みを感じません。
「痛みを感じないのに、脳は刺激を感じている」この状態が、楽な姿勢を見失ってしまった脳をリセットするのに最適な状態です。
ツボ(後金門)の確認方法
ツボは組み合わせによって効果が減ったり、逆効果になることもあります。後金門に関しては、左右両方に刺激を加えても、効果は下がらないことが検証でわかってます。むしろ、左右両方使うことで効果が高まることが多いため、迷わず左右両方のツボを使って下さい。
ツボがあっているかどうかを確かめる方法で一番簡単なのは、首の動きを確認することです。首だけで上を向いたときの行きやすさと、どこまで動くかを、後金門に鍼をする前と後で確認してみて下さい。上を向きやすくなったら、良いポイントを捉えられています。
シール鍼を使った場合は、3日程度で取り替えることをお勧めします。現在検証中ですが、シール鍼は4日目で剥がした方が、パフォーマンスが上がることを確認しています。また、その際に同じ箇所に貼り直すと、さらにパフォーマンスが上がることも確認していますので、4日目で張り替えることをお勧めします。
ツボ(後金門)の意外な効果
後金門は猫背の原因を修正することで、ストレートネックを調整し、首の痛み・コリに作用します。
同時に、全身が調整されるので様々な症状に効果が期待できます。主なものは次のようになります。
- 上を向いたときの首の痛み
- 腱鞘炎(腕をひねったときに痛むタイプ)
- 腰痛(前屈・後屈の痛み)
- 膝の不調(屈伸運動の改善)
- お腹の張り
お腹の張りとメンタルの関係
私たちは臨床で、精神的な不調がお腹の張りとリンクしている症例を数多く経験しています。これは、お腹の張りが強いと、呼吸が浅くなることが関連していると考えられます。また、お腹が張ると言うことは、お腹側に体が引っ張られることになるので、背中が丸くなります。
拳を握り続けていると怒りが強くなる、箸を口に加えて無理矢理作った笑顔で過ごしていると自然と楽しい気分になる、など、体の動きが精神に強い影響を与えることが科学的にわかっています。
背中を丸めてうつむいた格好は「気分が沈んだ状態」を表現しています。先ほどの理論に従うと、この格好を続けると、自然と気分が沈んでいってしまうことになります。
金門を使うと、お腹の張りがとれて、背筋が伸びやすくなります。同時に、不思議と気持ちが上がってきます。
強いストレスがあるわけでもないのに、疲れているわけでも無いのに、なぜか気分が沈みがちな時は、後金門が役立つ可能性があります。
ツボロジーについて
ツボロジーは、医師・医学博士・医学修士・鍼灸師が中心となって検証し、構築しているツボ理論です。
流派や思想に縛られず、検証結果を重視し、現代医療で役立つ標準治療を目指して研究・検証を重ねています。ただし、私たちだけの力で、医療を改革するのは不可能です。そのため、協力して頂ける鍼灸師を広く募集しています。
試してみた結果や、思わぬ効果、または、より良いツボ、より良い使い方、より良い理論などあれば、お知らせください。あなたの協力が医療の発展につながります。
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私たちの発見が、症状にお悩みの方のお役に、嬉しいです。
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