今回は、風邪症状をきっかけに突発性難聴を発症し、強い耳鳴りと鼓膜の圧迫感を伴った20代男性の症例をご紹介します。
患者プロフィール
- 患者:男性・20代
- 来院時期:2018年3月
- 主訴:右耳の聴力低下、強い耳鳴り、鼓膜の圧迫感
発症から来院までの経過
発症10日前より咳・鼻水・痰の風邪症状あり。 3月19日夕方に右耳の感覚がなくなり、音が聞こえず、強い耳鳴りと鼓膜の圧迫感を自覚。翌日から耳鼻科に1週間入院し、星状神経節ブロックやステロイド治療を受けるが、副作用や悪化のため中止。 退院後、聴力は一部戻ったが「こもって聞き取りづらい」「高いキーンという耳鳴りが2種類聞こえる」などの症状が残存。精神的な不調により耳鳴り・圧迫感が悪化する状態だった。
同時に治療した症状
- 鼓膜の圧迫感
- 首の痛み
鍼灸治療と経過
- 初診:耳周囲から首にかけて強い緊張。上を向くと首の後ろが痛む。脚のツボを使用し、首の動作痛が消失。肩甲骨の動きを改善するためスネのツボを使用。さらに僧帽筋の緊張に対して手の甲に鍼。
- 5診目:検査上の数値が改善。しかし体感は変化なし。
- 9診目:耳鳴りが小さくなる。
- 11診目:聴力検査で問題ない数値に。ただし「耳がこもる感じ」が残存。
- 16診目:耳鳴りがない時間が出てくる。
- 20診目:耳鳴り・圧迫感ともに消失。聴力も正常化し、治療終了。
聴力検査(オージオグラム)の推移




使用した主なツボ
- 漏谷(R)
- 光明(R)
- 手井(R)
考察
風邪症状をきっかけに聴力がほぼ消失した症例。入院治療では改善に至らず、退院直後に鍼灸治療を開始できたことが早期回復の要因となった。 聴力検査で数値が正常でも、耳鳴りや耳閉感が残ることは珍しくありません。そのため「検査で異常がない=治った」ではなく、体感を重視した治療の継続が重要です。本症例は、継続的な通院により最終的に耳鳴り・圧迫感とも消失し、完全回復に至りました。
▶ 札幌市の鍼灸による突発性難聴・耳鳴り治療ページ をご覧ください。
突発性難聴と鍼灸に関するよくある質問
Q1. 聴力検査で数値が正常でも耳鳴りや圧迫感が残るのはなぜですか?
A. 検査で測定できるのは限られた周波数です。検査で異常がなくても、特定の音域や内耳の血流・神経の不安定さで耳鳴りや耳閉感が続くことがあります。
Q2. 病院治療で効果がなかった場合でも鍼灸は有効ですか?
A. 病院治療と併用しながら鍼灸で首・肩・顎・体幹など全身の緊張を整えることで、耳鳴りや圧迫感が改善するケースがあります。
Q3. どのくらいの回数で改善しますか?
A. 個人差があります。本症例では20回で完全回復しましたが、5診目で数値改善、9診目で耳鳴り軽減など段階的に変化が出てきました。
Q4. 耳に直接鍼を打つのですか?
A. 当院では耳そのものに鍼は行いません。脚・手・背中など体の関連部位にやさしく鍼をし、耳周囲の血流や神経の働きを整えます。
Q5. 発症からどのくらいで鍼灸を始めると良いですか?
A. 早ければ早いほど効果が見込めます。本症例は発症から10日後と早い段階での開始が早期回復につながりました。
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